落日燃ゆ 浅見家の本棚 #41

浅見家の本棚

落日燃ゆ/城山 三郎

なぜ、彼が裁かれなければならなかったのか?

この本を始めて読み終えたのは2016年の1月だったように記憶しています。もう約2年前かと思うと不思議な感じもするのですが、読了後の悲しさは今でも覚えています。なぜ、彼ほどの人物がその他の軍部主導者達と同じ刑を受けなければならなかったのか、と。

しかし、読み終えたばかりの自分には見えていないものがありました。それは『広田自身が望んで、刑を受けた』ということです。




長州の憲法が国を滅ぼした元凶

今から約70年前。本作は、第二次世界大戦後の日本において、文官としてただ一人A級先般として死刑となった広田弘毅が主人公です。彼は政治家として外務大臣を歴任した後、第32代内閣総理大臣となったわけですが、彼は当所その就任要請を何度も辞退。

ですが、時代は彼を放ってはおかなかったのです。後に総理大臣を務めることとなる吉田茂(外務省時代の同期だったようですね)に説得され、結局はその要請に応じることに。今思えば、これが彼の運命を決定付けてしまったようにも思いますが、歴史に『タラ・レバ』は禁物。ここで『もし、広田が総理大臣の職を受けなかったら』と考えるのは、野暮というものでしょう。

作中において、何度も出てきた忘れられない一文をここに挙げたいと思います。

『日本を滅ぼした長州の憲法』

ここでいう”長州の憲法”とは、つまり統帥権のこと。戦時中に軍部の独走(暴走)は正にこの一文に尽き、平和外交を目指す広田を、何度も統帥権なる厄介なものが妨げることとなったのです。その証拠に広田は国会答弁においてその旨の発言はしておりますし、『外交の相手は軍部』とまで断言してもいます。

せめて広田の精神だけは見習って、我々も生きていきたい

しかし、結局は日本は戦争に突入してしまいました。広田は文官でありながら、その責任を負うために東京裁判では弁護士を依頼するどころか、自分自身を弁護したり無罪を主張したりすることもなく、刑に服したのであります。

冒頭で、私が述べた『軍部主導者達と同じ刑を受けなければならなかったのか』という思いは、広田自身にはありませんでした。正しく国のために殉じていったのです。命を散らすことだけが美徳…とは言えない時代の現在ですが、せめて今の政治家たちはその精神位は見習ってもらいたいものです。

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