悪名残すとも 浅見家の本棚 #42

浅見家の本棚

悪名残すとも/吉川 永青

たとえ後世に評価されなくとも、信念を貫き通せるか?

例えば、後世に対してどのような悪名を残すことになるとしても、自分が正しいと思ったことならば迷わずやり遂げられることができるでしょうか。

…否。

私はそのような立派な人間ではありませんし、まず先に自らの保身を図ってしまう典型的な小物であります。信念なども取り立てて無く、もしあるとすれば、とかく仕事に関しては『明日できることは明日やろう』主義者でありますので、そういった高邁な精神とはかけ離れた唾棄すべき存在です。

自分の読書量がただ単に不足しているだけなのかもしれませんが、私は本書『悪名残すとも』の主人公である陶隆房(晴賢)を題材にした小説と今回初めて出会うことができました。




陶隆房(晴賢)とは?

ここで簡単に、陶隆房(以下、晴賢)について説明しましょう。

陶晴賢とは、戦国時代初期に中国地方に一大勢力を築いていた大内家の筆頭家老を務めた人物です。かの有名な厳島合戦において毛利元就に敗れてしまうのですが、彼の場合は主人である大内義隆を弑したことでも有名であり、本書のタイトルにもある『悪名』とは、正にその主人殺しの咎を指しております。

さてさて、どうしても中国地方における戦国時代の小説となりますと、主人公は『三本の矢』のエピソードで有名な毛利元就や、その息子(三男)・小早川隆景、滅びゆく尼子家に殉じて散った山中鹿之助などにスポットが集中しがちではないかと思います。戦国時代物が大好きな私もそういった作品はこれまで何作か読んでおりますし、変わり種というところでは宇喜多直家が主人公の作品なども読んでおります。

しかし本作の主人公は、上記でも触れている通り『陶 晴賢』であります。そのような背景もあり、非常に新鮮な感覚で、終始読み進めることができました。

大内家の滅亡と、晴賢の裏切りの背景とは

何故、あれだけの勢力を誇っていた大内家が滅んでしまったのか。そして晴賢が主人・大内義隆を裏切ることになったのか…フィクションではありますが、本作を読んで分かったような気が致します。

…元就との友情は、本当にあったのかは甚だ疑問ですがね。

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