読書のチカラ/齋藤 孝
少々古いデータになりますが、本書の冒頭において2010年にOECD(経済協力開発機構)によって行われた『読書』についての調査結果が掲載されています。
調査の対象者は、世界各国の十五歳の少年・少女。
その調査結果によると、『趣味としての読書をしない』と答えた日本の子供は44.2%という結果でした。
つまり10人中4人が本を読んでいないということになります。
それもそのはずです。
よく、年配の方は若者に対して
本を読みなさい、読書は必要だよ。
と諭しますが、肝心の『なぜ必要なのか?』ということまでには触れないからです。
現代の若者達は、一昔よりも読書以外のメディアに囲まれています。
インターネット、スマホ、ゲーム等々…。
きちんと読書の効果について理解が深まれば、きっと本を選ぶ人も出てくるはず…という言いようのない使命感と自分なりに『本を読む意義』の確認をしたいこともあって本書を読み進めた次第です。
〇私たちを動かす『見えないチカラ』
本書の作者・齋藤孝先生は、読書がもたらす効果として『決断力、判断力、多面的思考が磨かれる』と述べています。
また、本を書くような一流の人にはなかなか会うことは出来ませんが、一流の人が書いた本はいつでも誰でも読むことが出来る…とも併せて説明しています。
そして、そんな齋藤先生が語る『本を読む意義』は以下の3つです。
①情報を得るため
②楽しく有意義に過ごすため
③精神を豊かにするため
単に情報を得るだけではなく、人間として成長するための必要なツールであることが分かりますね。
〇人生は『出会い』で決まる
ただし、そんな読書においても注意が必要だと個人的には考えています。
それは、本の選び方についてです。
私達人間は、一人一人好みや趣向が違います。
それは、特色という良い面もありますが、読書に限っては様々なジャンルの本を読むことが、上記にて挙げた多面的思考を更に効果的にさせることに繋がります。
我が国特有の『文系』や『理系』といったジャンルに拘らず、まずは目に留まった本を読むことで、私達の視界は今よりも広がりを見せることでしょう。
〇私たちに残された叡智について
かつての小説家は大教養人だった、とのことです。
その証拠に、あの大江健三郎さんは幼少時代に地元の図書館の本を全て読破しているとか。
その位の量の本を読むことで初めて不世出の作品を世に送り出すことが可能となるのですが、現代は良くも悪くも手軽に出版出来てしまう時代。
齋藤先生によれば、日本は天然資源も乏しく、これからは人口減少や高齢化社会など様々な問題が押し寄せてきます。
そのような厳しい時代を迎えるにあたって、我が国が今の生活水準を維持していくためには読書立国を目指すしかない…と述べています。
〇読書を続ける5つの習慣
とはいえ、読書を続けるということは慣れない内はなかなか大変なことだと思います。
今の世の中は、誘惑が多すぎます。
テレビもあればインターネットもありますし、スマホも若者達の重要な情報収集のツールとなっています。
ゲームも余暇を過ごすには格好の媒体です(私もレトロゲームにだいぶお世話になっていますが)。
ですから、本書では『読書を続ける5つの習慣』として以下の項目が挙げられています。
①自問自考
②素読、特に子供への読み聞かせは効果的
③常に背表紙が目に入るようにしておく
④難しい箇所は飛ばしてもいい
⑤SNSやブログ等でのアウトプットを意識
特に④は大きいのではないでしょうか?
私達は一冊の本を最後まで読まなければならないという固定観念を持っています。
まずは気楽に読んでいくことで勝手に知識が付いてきますので、その時にまた読めば分からなかった部分を理解できる日が来ると思います。
〇読書力10倍アップの法則
更に齋藤先生は、私達に本の効果的な読み方を提言してくれています。
それは『師事読み』というもの。
読んで字の如く、ある作家を自分の師として仰ぐことから『師事読み』は始まります。
そして、その師の書いた本を立て続けに読んでいくことで、思想や人格を効率的に吸収していくことが出来る…というものです。
正しく、齋藤先生の書いた作品を読み続ける現在の私の状態を、端的に表しているといえます。
以上、齋藤孝先生の『読書のチカラ』を大まかにまとめてみました。
本書を読み終えた今の私には、齋藤先生の思想が乗り移っております。
それだけではなく、当所の個人的な目標でありました自分なりの『読書をする意義』についても確認をすることができました。
これが更に読書を続ける一種のモチベーションとなることでしょう。
読書をすることで、このような効果が私達にはもたらされます。
まずは気軽な気持ちで、読書を始めてみましょう。
皆さんは読書、していますか?
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