八甲田山 死の彷徨/新田 次郎
雪山遭難者が現れる季節になりました
季節が秋から冬に移ろうとしています。というか、移りました。
冬になると、寒くなるとどうなるのか…毎年毎年この季節になりますと、山に登っては遭難する人が後を絶ちません。生粋の天の邪鬼であると同時に、鬼のインドアである私から言わせれば、その遭難者に対する救助費用は全て当事者に請求して頂きたい…というのが正直なところです。
つまり、『全ては自己責任である』と。
誰に頼まれたわけでもなく、自分の意思・欲求によって山を登るわけですから、最後まで己の責任の範囲の中で崇高な趣味を完結して頂きたいものです。
実際にあった雪中行軍遭難事故が本書の舞台
さてさて、本書『八甲田山 死の彷徨い』についてですね。
タイトルから察することができるでしょう。有名且つショッキングな事故のため、ご存知の方も多いと思います。明治35年に日本陸軍第8師団歩兵第5連隊が青森県の八甲田山における雪中行軍訓練の際に発生した遭難事故を、新田次郎氏が描いた作品です。雪中行軍に参加した隊員の大部分が還らぬ人となり、彼らが体験した雪山の壮絶な描写が特徴ですね。
個人的に印象に残ったシーンは、一部の隊員があまりの寒さに発狂し、身に着けている衣服を全て脱ぎ捨てて凍った川に飛び込んだ箇所。極限まで追い込まれてしまうと、我々人間はそこまで狂ってしまうものなのかと率直に驚きました。今でも頭から離れません。
元来インドアの私でありますが、先日レビュー記事を投稿した『慟哭の谷』とセットで読めば、軽率に北国の雪山に立ち入ろうなどという考えは全くのゼロになりました。やはり、冬は自宅のコタツが一番。あれは人間をダメにしてしまう代物かもしれませんが、少なくとも雪山のように命までは奪いません(うちの実家のように、練炭式のコタツは例外ですが…)。
私からの提案。登山者に『八甲田山 死の彷徨』を配布してみては?
…で、ここからが本題なのですが。
登山をする方については、全て事前申請を原則とし、初めて申請する方にはこの『八甲田山 死の彷徨』を配布する…というのはどうでしょうか。つまり、『山に登る前に、この本をよく読んでおけよ』という一種の注意喚起であります。
この取り組みは、短期的視野で見てしまうと『登山者一人一人に本を買う予算などあるはずがないではないか』などと怒られてしまいそうですが、逆に長い目で見れば遭難者の数も減ることでしょうし、何より出版社や本屋さんも潤い、それが引いては捜索費用の削減に繋がるのではないでしょうか。
地方自治体の担当の方、このアイディアどうでしょう?(絶対実現しないだろうけど)
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