紙つなげ!彼らが本の紙を造っている/佐々 涼子
東日本大震災から間もなく7年。
東日本大震災という未曽有の大災害から、間もなく7年が経とうとしています。
私の住む福島県を含めた被災地は少しずつではありますが復興しつつあり、新たな一歩を踏み出し始めています。
本書の舞台は宮城県石巻市にある、日本製紙石巻工場です。
日本製紙は、我が国の出版用紙の約4割を担っているようで、普段私達が何気なく手に取っている本などは、この石巻工場において製造されているとのことです。
その日本製紙石巻工場において、3.11の東日本大震災発生時に何が起こったのか…著者である佐々さんが熱心に取材をされたであろう、当時の記録が克明に文章化された貴重な本であると私は思っています。
紙の本の未来は確かにある。
出版不況や電子書籍の躍進といったニュースを耳にすることの多い昨今ですが、私は本書を読み終えて、紙の本の未来は確かにある…ということを確信しました。
これほどまでに熱い気持ちで出版用紙を作っている人達がいる限り、紙の本は無くなったりしないでしょう。
著者である佐々さんは、本書の中でこのように語っています。
以下、引用させて頂きます。
もし、石巻工場が閉鎖となったら、出版業界はどうなっていただろう。
電子書籍化に拍車がかかり、新しいメディアの時代がやってきただろうか。
それとも他の向上にシェアが移っていただろうか。
(本文より引用)
振替ってみれば、東日本大震災は、この国がこれから辿る道を選びなおす岐路であったと言えるだろう。
(本文より引用)
そうなのです、確かにあの東日本大震災は、出版業界においても岐路だったのです。
日本製紙石巻工場は、被災から約半年という驚くべき短期間の間に、誠に見事な復旧を遂げることができました。
これはひとえに、社長を始めとする多くの社員や関係会社の皆さんの力があったことに他ならないのですが、その復旧期間の間は、当然ですが日本製紙石巻工場では紙を造ることができませんでした。
しかし、出版社の方では絶えず本を世に送り出し続けなければなりません。
『企業』という枠組みを超えた、製紙会社としての存在意義
日本製紙は、同業他社である王子製紙に復旧期間中の自社分の紙の製造を依頼したのです。
その日本製紙からの依頼に対する以下の回答が、本書内で最も私に感動を与えてくれました。
『どんなことをしてでも、日本製紙さんの分まで出版用紙を最優先で作ります』
(本文より引用)
『企業』という枠組みを超え、出版業界を支えている人達の気持ちが皆同じ方向を向いていることが本書を通してよく伝わって参りました。
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