『峠』/司馬遼太郎
来年は、戊辰戦争150周年
我々福島県民にとって、2018年は特別な年になりそうです。
…と、いいますのも来年2018年は明治維新…つまり戊辰戦争から丁度150年という節目の年だからです。
幕末・明治維新期において私の地元である二本松藩は、隣接する会津藩と共に奥羽越列藩同盟に加盟し薩長土肥率いる官軍相手に完膚なきまでに叩き潰され、『賊軍』のレッテルを貼られてしまいました。
世間一般的には2018年は明治維新150周年なのでしょうが、我々の視点から考えるとあくまでも戊辰戦争から150年なのです。
本書の舞台は東北ではなく、長岡。
司馬遼太郎さんによって書かれた『峠』の舞台となるのは、二本松藩や会津藩と同じく奥羽越列藩同盟に加盟した長岡藩です。
そして本書の主人公は、その長岡藩の家老として陣頭に立ち、官軍相手にガトリングをぶっ放した河井継之助という人物です。
実はこの本に先立ち、童門冬二氏の『小説 河井継之助』を読みました。
タイトルの通り、主人公である長岡藩・家老の河井継之助の生い立ちから、その考え方に至るまでが細かく描写されていたのですが、その肝心の最後については省略されておりました。
別に文句を付けるわけではないのですが、人の生き様はその人生の最後にこそ色濃く出るものだろうと個人的には考えております。
『そんなもの読む前に勉強しとけや』と言われてしまうと、ぐうの音も出ないのでありますが、河井継之助をよく知らない人に今まで以上に知ってもらうためには、やはりその最後も書いてほしい…そういった経緯もあり、この『峠』を手に取ったのであります。
『峠』、分厚いんです
ページ数はなんと驚愕の711。
かなりの量で、読み切るのに少々時間がかかってしまったのですが、同じく戊辰戦争で敗れた二本松出身の私にとっては『河井継之助のような先見の明を持つ人物が二本松藩にもいてくれたら…』と思わずにはいられませんでした。
諸事情から結局戦争自体を回避することは河井をもってしても出来なかったことに加え、彼の評価については賛否が激しく分かれる傾向にありますが、頭が良すぎたのでしょうね。
このページ数の多さからも、著者・司馬遼太郎氏の力の入れ具合が伝わって参りました。
河井継之助の人間性
上記にて、河井継之助は先見の明を持つ人物…と私は書きました。
しかし、河井継之助はそれだけの人物ではありません。
家中でいうと中堅クラスの家に生まれた河井継之助。
しかし、通常通りにお勤めを果たしていただけでは到底家老職に就ける家柄の出身ではありませんでした。
つまり、ただ単に先見の明を持っていた…というだけではなくて、それ相応の才能があることを主君(牧野氏)に認められたからこその、若くしての家老就任だったのです。
河井継之助は必ずしも周囲には好かれておらず、敵も多かったそうですが、生まれ持った才能だけではなく主君…つまり上司に恵まれていたことも彼の人生を決定づけたのです。
もっとも、結果的には彼は戊辰戦争で負った傷により41歳で亡くなります。
どのような生き方が彼にとって幸せだったのか…ということについては、平和な時代に生きている我々には到底分かりません。
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