信長の二十四時間/富樫 倫太郎
三重県伊賀市。
伊賀…と言えば、やはり忍者でしょう。
伊賀市としても『忍者の里』を前面に出して観光PRをしているようですし、私達が抱いているイメージが間違ってはおりません。
本作は、その伊賀が主な舞台。
昨年、映画『忍びの国』が大きな話題を生みましたが、こちらも舞台は伊賀。
やはり、伊賀と忍者は強い結びつきとなっているのが分かりますね。
ご存知の通り、伊賀は1981年に織田軍の侵攻によってほぼ根絶やしにされてしまいました。
そのことが『伊賀忍者』を親・信長派と半・信長派を二分させることに繋がるのですが、個人的にはこれら二派の代理戦争的様相を描いた作品であると読後に強く感じました。
一方は信長に付き、伊賀忍者を守ろうとする者。
一方は、織田軍に殺された一族の仇を討とうとする者。
これらが本能寺の変という歴史的大事件を時間軸の中心に据えた二十四時間の間に、どのように関与したか…これが本作『信長の二十四時間』の大きな特徴であると言えます。
本能寺の変の黒幕とは?
私が学生時代の頃は、本能寺の変の首謀者と言えば直接信長を討った『明智光秀』本人が定説でありました。
しかし近年になってその定説はどうやら崩れかけてきておりまして、『明智光秀・黒幕説』の他に
①羽柴秀吉・黒幕説
②徳川家康・黒幕説
③朝廷・黒幕説
など、様々な説が浮上してきています。
このような歴史的大事件の黒幕を考えるにあたっては、『その後に誰が一番得をしているか?』を考えるのが一般的だと思われます。
本能寺の変の後に何が起こったか…ということをまず考えなければなりません。
『本能寺の変』後に最も得をした人物とは?
本能寺の変の後に何が起こったのか?
そうです。
羽柴秀吉が織田家中をまとめ、天下人になりました。
徳川家康も、最終的には秀吉の息子である豊臣秀頼を滅ぼし、徳川幕府を開きました。
どちらの天下も、元を辿れば信長が切り従えた領地や人材が地盤となったものです。
その観点から考えると、黒幕としてはこの両者が有力になります。
しかしながら、朝廷・黒幕説も実は有力な説の一つ。
と、言うのもこの場合の朝廷にとっての『得』とは、自身の体制の堅持又は保持。
本作中で信長は、そのような朝廷の体制の改革を画策していたことから特に公家達が暗躍したことも十分に考えられます。
結局、死人に口なしなわけなので今となってはハッキリとした黒幕が誰なのかは判断しようがありませんが、織田信長が誰かの手によって弑されたのは紛れもない事実。
ネタバレになってしまうといけませんので、本作中の『本能寺の変』の黒幕が誰なのかは明言を避けますが、ここまで引っ張ってしまえば伊賀忍者が関与していることは皆さんもお察しのことと思います。
そういえば、24(TWENTY FOUR)
二十四時間と聞くと、一時期日本でもブームとなった海外ドラマ『24(TWENTY FOUR)』を思い出してしまうのは私だけでしょうか?
私自身もその時の流行に乗っかって何回かドラマを見た記憶があるのですが、放送されるストーリーの一話分がドラマ中の一時間として、リアルタイムに進行していく…というのが『24』の大きな特徴でしたね。
本作は、織田信長がその生涯を閉じたと言われる『本能寺の変』を軸とした、最後の一日が克明に描かれています(後半部分で)。
特に信長自身は稀代の英雄として現代の私達に認知されているのですが、そのイメージが強いからこそ結末部分は多少ガッカリする部分もあるのですが、歴史好きには十分楽しめる内容になっておりますので是非読んでみて下さい。
そういえば本能寺が起きたのは1582年の6月21日。
微妙にニアミスとなってしまいました。
気が利いたブログの管理人なら6月21日にこの記事を公開するのでありましょうが、そうできなかったあたりが自分に甘い浅見ヨシヒロたる由縁ですね…。