『帝都を復興せよ』/江上 剛
江藤新平じゃないよ、後藤新平だよ
この本は、1923年(大正12年)に発生した関東大震災からの復興に挑む、政治家・後藤新平が主人公の小説です。明治初頭に発生した『佐賀の乱』の首謀者に祭り上げられてしまった江藤新平ではありません、悪しからず…。
さてさて、関東大震災は文字通り関東地方を中心に発生した地震災害でありまして、実に10万人以上もの方々が犠牲となってしまったようです。未だ記憶に新しい東日本大震災では津波による溺死者が多かったのに対し、この関東大震災では焼死が最も多かったことが特徴でしょうか。
年代は違いますが、江戸(東京)も昔は火事が頻繁に起こっていたようで、木造建物の数自体も多く、それらが密集していたことから徳川治世時代も被害が甚大化していたのではないでしょうか。
『復興』と『復旧』は違う
タイトルにも使われている『復興』ですが、昔何かで読んだ本(タイトルが思い出せません、失礼…)によりますと『復興』と『復旧』は厳密には違うようです。簡単に言ってしまいますと、
『復旧』は、壊れたり衰えたりしたものを元に戻すこと。
『復興』は、再び元に戻し、更に盛んな状態にすること。
本書の中で、後藤新平は震災で半ば崩壊してしまった帝都・東京を『復旧』ではなく『復興』させようと気を吐きます。しかし、彼の前には例えば旧態依然の思惑などが立ちはだかるのです。
昔も今も、政治家のお偉方さん達は口を開けば『復興』と言いますが、結局考えているのは己の利権のことばかり。
求む、真の政治家
復興大臣の失言・暴言は批判されてしかるべきことかもしれませんが、それを餌に政権批判に終始する野党も含め、我々被災地の人間からすれば同じ穴のムジナであります。そんな古今東西の汚れ切った政治家たちの中において、『復興』というものに対して、極めて真剣に考えた後藤新平の存在が稀有過ぎてもう…。
…いかん、愚痴しか出てこない…。
同じ激甚災害となった東日本大震災の被害者の一人として、私はこの本を強く今の政治家の皆さん方に薦めたい気持ちです。