ちょっと今から仕事やめてくる/北川 恵海
今、我が国には『働き方改革』という一つの大きな動きが出来つつあります。一昔前は考えられなかったですね。それ位に、労働環境に対する世間の注目とでももうしましょうか、関心が高まっているのだと思います。
日本人は、概ね『仕事』というものに対して、
『額に汗して、ひたすら真面目に働き、会社に尽くさなければならない』
といった、健気な気持ちで接していました(まるで旧日本軍の『お国のために』的なものでしょうか)。
しかし、皆さんもご存知の通り、我が国の雇用環境は一変しました。企業者が従業員に対して、終身雇用を約束できていた時代であれば
『額に汗して、ひたすら真面目に働き、会社に尽くさなければならない』
という考えもまだ通用したのでしょうが、最近の電通やゼリア新薬、NHKの社員・局員が労働環境を苦に自ら命を絶ってしまったことに代表されるように、その一昔前の両社…つまり企業と従業員の関係はもはや崩れ去っているというのが現実です。
実はこの本、仕事(私と同じ職場)を辞めようか悩んでいた後輩に渡すために買ってあげた本なのです。自分で言うのもおかしな話なのですが、私の職場は給料はそれほど高くはないものの、ほぼ毎日提示で帰れますし、福利厚生もそこそこ充実している超絶ホワイト企業です。しかし、結局その後輩はとある事情から退職することを決意したのですが、その際に
『大変お世話になりました。実はこの本を読んで、勇気をもらうことができました。本当に面白い本だったので、浅見さんにも是非読んで欲しいと思って新品を買ってきました。ありがとうございました。』
という言葉と共に、私にこの本を渡して去っていきました。
そんな経緯があり、この本は我が家の本棚にやって参りました。
…で、肝心の中身の法なのですが…
『お前はかつての俺か?』
と、言いたくなる位に社会人一年目の自分を同じような境遇の主人公が作中に登場。
随所で
『あー、そうそう、俺もあの時はこんな気持ちだったな…』
と、当時を思い出させる描写に巡り合うことができました。
私の場合は、運よく己の力のみでその会社を辞めて今に至っているわけですが、この本は仕事で悩んでいる人だけでなく、例えば部下を持つ役職の方々にも読んでほしい一冊だと思います。優しさの連鎖が、より良い労働環境を作るのですから。