『戦国北条記』/伊東 潤(PHP文芸文庫)
今回紹介するのは、伊東 潤さんによって書かれた『戦国北条記』。
戦国時代に関東地方を治めていた、北条家の栄枯盛衰を丁寧に解説してくれている一冊です。
私自身歴史が好きで、ゲーム【信長の野望】シリーズをプレイするのですが、北条家は中盤以降に強力なライバルとして立ちはだかってくることが多い印象ですね。
そんな戦国時代の北条家。
初代・早雲庵宗瑞から氏綱⇒氏康⇒氏政⇒氏直と五代目まで続きましたが、ご存じのとおり豊臣秀吉の小田原征伐によって1590年に滅亡してしまいました。
今回の記事では『戦国北条記』の紹介を兼ねて、最終的には北条五代の中から個人的なMVPを選出してみようと思います。
『戦国北条記』とは?
繰り返しになりますが、今回紹介する本・『戦国北条記』の著者は伊東 潤さんです。
『戦国北条記』は2016年にPHP研究所から発行されました。
以下に示すのは、本書『戦国北条記』の目次と概要です。
選書の際の参考にしてみてください。
『戦国北条記』 目次
第一章 黎明の使者
第二章 東方への道
第三章 落日の室町幕府
第四章 関東進出
第五章 他国之兇徒
第六章 苦闘の果て
第七章 運命の一戦
第八章 三国同盟
第九章 関東三国志
第十章 手切之一札
第十一章 垂れ込める暗雲
第十二章 小田原合戦
概要(本書裏表紙より引用)
国府台、河越、三増峠の各合戦や、小田原籠城戦――。
北条五代を『合戦』と『外交』を軸に読み解くことで、関東における戦国百年の実相が見えてくる!
伊勢盛時(のちの北条早雲)による伊豆平定から、小田原で豊臣秀吉に屈するまでの興亡の歴史を、最新の研究成果を盛り込みドラマチックに描く。
従来の北条氏のイメージを一新させる戦国ファン必読のノンフィクション。
『実録 戦国北条記』を改題。
【書評・感想】『戦国北条記』を読み終えて
本書を読み始める前まで、北条家は三代目・氏康の頃が絶頂期…という勝手なイメージを持っていました。
実際に【信長の野望】をプレイすると、歴代の北条家当主で最も手強いのは北条氏康。
能力値も高く、北条氏康を敵に回すと非常に苦労させられました。
しかし、本書『戦国北条記』をとおして著者(伊東さん)の解説を読んでいくと、歴代北条家の当主に対する印象が変わってきます。
特に大きく印象が変わったのは、氏康の後を継いだ四代目・氏政について。
北条家を滅亡に導いてしまった感のある氏政ですが、能力面というよりも、単純に運が悪かったように思えてなりません。
以下は『戦国北条記』を読んだ私が特に印象に残った箇所(インプレッションポイント)です。
3点、ぜひ紹介させてください。
インプレッションポイント①
まず紹介するのは、初代・早雲庵宗瑞の後を継いだ北条氏綱に関する記載。
現代に置き換えるならば、創業した社長の後を継いだ二代目…という位置づけになろうかと思います。
初代・宗瑞や三代目・氏康と比べると地味な印象を受けることが多い氏綱。
しかし…氏綱が家を継いだ当時、北条家は周囲に数多くの敵を抱え、最も不安定な時期でもありました。
そのような時期を乗り越え、三代目・氏康へ北条家を繋いだ氏綱の存在は決して無視できません。
正に影の立役者といったところでしょうか。
インプレッションポイント②
こちらは不運な四代目・氏政に関する記載です。
氏政は生き残りを懸け、巨大な勢力を誇っていた織田信長との同盟に踏み切ることに。
この時は結果的に北条家を維持することに成功した氏政でしたが、織田家に味方をして上野国を攻略しても何の恩恵も与えられませんでした。
このことに不満を抱いた氏政は中央政権とのパイプの維持や強化を怠るようになり、それが小田原合戦の始まりに繋がることとなったのです。
今も昔も大事なのは人脈。
この時は相手が悪かった…の一言に尽きるでしょう。
インプレッションポイント③
北条家が現れるまでの関東地方は、鎌倉時代や室町幕府初期から各地を治める守旧勢力が割拠した状態。
いずれも古い政治体制で統治を続けており、民は苦しい生活を強いられていました。
北条家はそんな守旧勢力を打ち払い、年貢の負担を軽減させるなど善政を敷くことで、文字どおり関東地方の救世主となったのです。
その関東地方を、北条家の後に治めたのが徳川家康。
北条氏によって統治された関東地方を基盤として、家康は江戸のまちづくりに着手。
その結果、江戸は栄え、現在の東京へと至って多くの人口を誇る国際的な都市となりました。
まとめ
この記事のまとめとして、冒頭でもお話ししたとおり北条家歴代当主の中から個人的にMVPを選出したいと思います。
私、浅見ヨシヒロの個人的な北条家歴代当主MVPは…二代目の北条氏綱です。
初代・早雲庵宗瑞が築いた基盤を固め、着実に三代目・氏康へと繋いだその功績はもっと評価されてもいいはずです。
また、伊東氏が最後にまとめていた”北条氏は滅亡したというよりは、その使命を全うしたのである。”という記述には非常に考えさせられました。
家に限らず、時代の流れの中で流行りや廃りは必ず存在します。
現代を生きる私達も同じで、その時代の流れに対応しながら生きていくことが求められているのだということを感じた次第であります。
本書が気になった方は、著者・伊東 潤さんが同じく手掛けた『北条五代』もぜひ手に取ってみてください。
こちら『北条五代』という本は、伊東さんと『天地人』の原作者として知られる火坂 雅志さんの共著による歴史小説です。
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